包丁研ぎ教室〜@かまた刃研社〜で、包丁の研ぎ方を勉強してきました

豊かな暮らしを目指すにあたって、良い道具を手入れしながら永く使うということを目指しています。包丁も安い包丁を使い捨てるのではなく、良い包丁を長く使いたいと思って、メンテナンスの方法を改めて勉強してきました。

包丁研ぎ教室体験記

かまた刃研社の包丁研ぎ教室とは

かまた刃研社は、厨房・調理器具の問屋街である「かっぱ橋道具街」に店を構える、包丁と包丁研ぎの専門店です。

こちらのお店では、包丁研ぎ教室を毎月第一・第三火曜日に開催しています。入門編と応用編があり、入門編は包丁研ぎの基本を教わりながら、用意された砥石と、刃を潰した包丁を研いで切れ味を復活させる、という講義+実技講習で約1時間ちょっとの教室です。今回はこの入門編を受講しました。ちなみに応用編は入門編を受講した人が対象で、自宅の包丁を持ってきて研ぐという内容だそうです。どちらも受講料は5000円(高!)ですが、入門編では使った砥石(定価5400円)を持ち帰られるので、講義は実質無料ということになります。

まずは予約しよう!

じつはこの教室、大変人気になっていて、なかなか予約が取れません。予約は、教室開催日の前月の1日のAM10:00から、かまた刃研社のHPより行います。今回2月の回に参加しましたが、新年の営業開始日の1月5日の10:00に申し込みましたが、その日のうちに予約でいっぱいになっていたようです。

HPをチェックして、自分が行きたい日の予約がいつからかを確認して、準備しておきましょう。

講義開始まで

開催日2日前にリマインドメールが来て、そこに詳細が書いてあるので、あまり迷うことはありません。入門編の時間は11:00〜12:30です。当日は、レジで教室受講者である旨を伝えて、受講料を払うと、4階に上がるように案内されます。教室に入ると、テーブルが4つあり、それぞれに包丁研ぎセット(水の入ったバット、砥石、包丁、タオル)がおいてあるので、セットがあって空いている席に座ります。割と狭いので、あまり荷物は持っていかない方がいいでしょう。買い物は教室の後にした方が良さそうです。時間になったら講師の方が来るので、それまで緊張感の中で待ってました。(社交性のある方は、周りの方とお話すると楽しいかもしれません)

教室の流れ

講師はかまた刃研社の三代目店主の鎌田晴一先生です。まずは砥石を水につけて、砥石が水を吸うまで、砥石について、包丁について、研ぎ方についての座学があります。お話が上手でとても聞きやすく、しかし専門的なところまできちんと説明してくださったので、とても面白かったです。内容については後述します。

それから、実際に研ぎ方を教えてくれます。まず先生が見本を見せてくれるので、それを真似しながら手元の包丁を研いでいきます。最初は荒い砥石、次に細かい砥石(中砥石)で研いで、最後に新聞紙を使って仕上げて終了です。

研ぎの前後でA4のコピー紙で切れ味を確認するのですが、研ぐ前は全く切れなかったのが、研いだ後はちゃんと切れるようになっていたので、上手くできたようです。

最後に先生が日経新聞に取材を受けて、包丁の研ぎ方について解説した記事のコピー(すごく細かく書いてあって、これを見れば講義を受けなくてもうまくできそう)を貰い、砥石と修了証をもらって教室を後にしました。ちなみにこの修了証を店頭で提示すると、1年間10%の割引が受けられるそうです。

包丁研ぎ教室で学んだ包丁アレコレ

ここからは、今回の教室で学んだことを載せていきます。マニアックな内容で面白かったので、備忘録として。

包丁の種類〜洋包丁と和包丁〜

包丁には、その形によって2つに分類できます。1つ目は洋包丁。「基本的に」1枚の鋼材(単一鋼材と言います)でできていて、刃の部分は両側から研いである「両刃」のものです。もう一つは和包丁で、こちらは硬い鋼と、柔らかい金属を2層重ねた複合鋼材で、柔らかい金属側からだけ研いだ「片刃」のものです。切れ味を決める刃の部分は硬い鋼になっています。和包丁の鋼の部分は刃から背の間の部分が少し凹んで反るようにカーブしており、このカーブにより、切った際に材料が包丁の腹にくっつくのを防ぐことができます。お刺身とか柔らかいものを切るときに、洋包丁との違いが出るとのことです。

きれいな模様があるダマスカス包丁について

上で洋包丁が「基本的に」単一鋼材とあるのは、硬い鋼材の両側に異なる材質の鋼材を貼り付けた3層構造になっている「ダマスカス包丁」というものがあるからです。両側から圧力を加えて金属を歪ませた上で削ると、美しい模様が浮かび上がります。この模様が日本刀をイメージさせるため、近年外国人観光客に大人気とのことです。もともとダマスカスは中東シリアの首都名です。かつてインドで取れた砂鉄をダマスカスで刃物に加工していました。当時の加工では刃物の表面に模様が表れていたことから、模様のある包丁をダマスカス包丁と呼ぶようになったとのことです。現在の模様はあくまで装飾であるため、切れ味には全く関係なく、包丁の質には、あくまで芯に使われている鋼材が関係するそうです。

鋼材について

包丁の性質を決める鋼材は、大きく分けて鋼とステンレス鋼の2つに分かれます。包丁用の鋼は純度の高い鉄に炭素を1%添加して800℃で焼入れするそうです。ステンレス鋼は、鋼に約15%程度のクロムを添加したものです。クロムを添加した鋼は、表面に不動態膜と呼ばれる化学的に非常に安定な膜を形成するため、とても錆びにくくなっています。それぞれの鋼材の中にも様々な種類があり、例えばステンレス鋼には、コバルトを配合したコバルト合金VG10や、パウダーハイス鋼などの高級鋼材があります。有名な鋼材メーカーとして、福井県越前市の「武生特殊鋼材」社があり、高級なダマスカス包丁の9割には同社の鋼材が使用されているとのことです。

砥石について

かつては砥石は天然のものが使われていました。包丁の材質が、ステンレスより柔らかい鋼がメインだった、人造砥石の品質が悪かったことなどが理由でした。しかし近年では、天然砥石が取れなくなり非常に高騰していること、硬く様々な金属を含むステンレスが包丁の材質として主流になり、天然砥石では研ぎにくくなったこと、人造砥石の品質が向上したことなどから、人造砥石が主流になっています。セラミック砥石が人気ですが、以前は製造中の乾燥工程を高温・短時間で行っていたため、中に気泡を生じ、吸水性が高くなり過ぎていました。最近では50℃で数日間乾燥させるため、気泡が細かく必要以上に吸水せず、使い勝手が向上しています。また、砥粒にホワイトアランダム(アルミ系の砥粒)を使うことで、粒子がトゲトゲした形になり、硬いステンレスでも研ぐことができます。天然砥石の砥粒は丸っこくて、滑らかな研ぎ心地ですが、その分研ぐ力は弱くなります。

砥石の粗さによって用途が異なり、♯150〜400を荒砥石、♯800〜1500を中砥石、♯4000〜8000(最近は12000)を仕上げ砥石といいます。鎌田先生曰く、包丁研ぎは短時間で仕上げる方がきちんと仕上がるそうです。仕上げ砥石で長時間研いでいると疲れて雑な仕事になってしまうから。目的に合わせて砥石を選ぶことがコツとのことです。

まとめ

今回改めて包丁の研ぎ方を勉強してきましたが、不安に思いながら研いでいたやり方について、自信を持てるようになったことが一番大きな収穫でした。また、包丁についての理解が深まり、より愛情を持ってケアできると思います。さっそく教えてもらった方法で包丁研ぎにチャレンジです。

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